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関わりあうことで誕生した「集中」

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インプロジャパンが某養護学校表現活動部OBのメンバー達とインプロワークショップを行うようになって、5年が過ぎました。

こちらの団体は、知的障がいをもつ生徒さん達が在学中から演劇活動に興味を持ち、卒業後、ミュージカル部として活動している団体です。
年に1~2回の公演をこなすメンバー達。
彼らのパフォーマンスは素晴らしいもので、公演のたび、高い評価とたくさんの感動を生み出しています。

メンバー達は障がいの程度は様々ですが、共通していることがあります。
それは、舞台で何かを表現すること、演じたり、歌ったり、踊ったりすることが大好きだということ。
そんな彼らとのインプロはとても気持ちがいいです。
それは、なぜか。

それは、いつもとても楽しそうに、そして、常に全力で向き合い、パフォーマンスをみせてくれているからです。


5年の月日の間、メンバーの入れ替わりもありましたが、ここ最近、続けてきているメンバーの著しい変化を感じています。
先日も彼らの稽古場で、月1回のワークショップを行ってきましたが、この日も本当に驚きと感動の連続でした。

回を重ねるごとに、彼らにとってインプロは「心を解放し、自由に自己を表現する場」となり、その自由に表現できる空間が、個性溢れる表現を見せてくれるようになってきていました。

そこで、今回、もっと「インプロ」を極めてもらいたく、レベルアップを彼らに求めました。
それは、「自分のアイデアに固執せず、お互いのアイデアを活かして、皆で一つのアイデアを創造する」こと。
彼らにとって、他からの影響を受けて、自分が思う枠組みから外れたアイデアを出すことはとても大変なことでもあります。
また、影響は受けやすいが、他の人のアイデアを理解することが難しいという方もいます。

でも、皆さんは頑張りました。
その鍵となったのが、「集中」です。

この日、皆さんが見せてくれたパフォーマンス。
それは、
・感動の駅伝のフィナーレの場面
・宇宙人に囚われて助けを待つ少女とそれを助けようと奮闘する特殊部隊
・天使の歌声を呼び起こし幸せをもたらすベルのお話
など。

今までは、自分が思った表現を伝えることはできていたのですが、お互いの役割を把握して、場面を創り出すことは難しいということがありました。
しかし、「目の前でできた世界に集中」。そうすることで、「皆で一つの世界」を次々と誕生させたのです。
また、今までは各々のアイデアの毛色がそれぞれ決まっていたのですが、「自分に集中する」のではなく、「皆で共有している世界に集中」することで、今回はイマジネーションの範囲がぐっと広がっていたように思います。
それぞれから出てくる単語や発想が、初めて聞くものばかりでした。

「集中する」ということは、その大切さは分かっていても、行動がなかなか伴わないことがあります。
しかし、彼らは「関わって創っていくこと」で、「目の前に深く集中」でき、今までとは違う楽しさを手に入れたようです。

「自分発信の自己表現」の楽しさから、「皆で創る一つの作品の中における自己表現」の楽しさを知った皆さん。

無限に拡がる可能性にこれからもどんどん挑戦してもらいたいです。

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